波の音しか聞こえない。

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 僕の朝は暗い。

 朝が弱いとか苦手だとかいうんじゃなくて、なにやら漠然とした不安に包まれてどんよりとしている朝が多いのだ。

 そういう朝は(そういう朝じゃなくてもだけど)、歩いて海へ出る。海っていうのは毎朝眺めても飽きないくらいに、いつも違った様相を見せる。なにも晴れわたった青空を反射するまぶしい海だけが美しいわけじゃない。世界中が雲に包まれたような白い海も、無数の雨粒を弾く黒い海も、それはそれで美しく、ときに僕は感嘆の声を漏らす。

 砂浜をトボトボと歩いていると、次第に波の音しか聞こえなくなる。目の前の小さな現実から、長く大きな人生へ、自分の視野が広く高くなるのを感じる。昨日までの悩みや明日待ち受ける問題もすべて、世の中で起きることは全部、”あたりまえ” のことなんだ、と思い出す。毎朝、思い出す。

 そう思えないときは、心も身体も疲れてる。僕は諦めて家に戻り、今日できることをやるだけだ。